辻村深月さんの『ツナグ』は傑作だ!【読書】
第2話 なんだこれは!『ツナグ』は傑作だ!
こんにちは、快斗です。
今回は、小説を紹介したいと思います!
辻村深月さんの『ツナグ』と『ツナグ 想い人の心得』
です。
それでは早速、物語の世界へLet's go!!
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≪あらすじ:ツナグ≫
一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員・・・・・・ツナグの仲介のもと再会した生者と死者。それぞれの想いをかかえた一夜の邂逅は、何をもたらすのだろうか。心の隅々に染み入る感動の連作長編小説。
(「BOOK」データベースより)
エピソード1
僕は『ツナグ』を読むのは2回目であった。ずいぶん前に一度、読んだことがあった。
そして、驚いたのである。
あの時感じた気持ちと、今回感じた気持ちが、全く違っていたから。
以前読んだときには、全く心が動かなかった。面白いとさえ、思わなかった。
「『ツナグ』映画化するんだ?へぇー、そんなに面白かったけ」などと、酷評しそうな勢いであった自分を、今は大変恥じている。
以前の感情を全て否定し、何が面白いのか分からないと考えていた自分をどっか遠くの隅に追いやって、そして、
「なんだこれは!辻村深月の傑作だ!」
と僕は今、真面目に思っている。
以前、友人にツナグの感想を聞かれ、「うーん、、、」と返事をしてしまったことを瞬時に思い出し、すぐに謝罪のラインを送ったほどである。
「とんだ勘違いをしていた。あれは傑作だった」
以前の僕はきっと、人生についてあまり多くを考えていなかったのだと思う。
生者として毎日を生きているだけで、満足だったから。それだけで楽しかったから。
あの頃の僕は、中学生だったのだ。
あれから10年ほどが経ち、もう一度『ツナグ』を手に取って読んだ今の僕は、あの頃の僕とは違っている。
生きてきたのだ。まだまだ足りないけれど、生きる、ということを積み上げ、人生と向き合ってきたのだ。
だから、以前の僕よりは、生と死が少しだけ分かるようになってきているのだと思う。
少しだけ上手に、捉えることができるようになってきているのだ、と。
そして無意識のように思う。
あぁ、きっとまた10年後、さらには20年後、50年後、『ツナグ』を再読するたびに
「これは傑作だ!なんて素晴らしいんだ!」
と感じるのだろう、と。その気持ちがますます、強くなっていくのだろう、と。
『ツナグ』は今の僕にとっても、これからの僕にとっても、傑作であり続けるのだと思う。
エピソード2
生者が死者に会うことができる。再び、もう一度、死者に会うことができる。
だけど、それは両者にとってたった一度だけの機会である。
会えるのは一度だけで、誰かと会ってしまえば、その人とはもちろん他の人とももう会うことはできない。そしてそれは死者にとっても同じこと。
いわゆる『相思相愛』の状態ならば、両者は会うことができるだろう。そういった状態でなくとも、会うことができる可能性はもちろんある。
このルールが、何よりも物語を深めるのだと僕は思っている。
使者に縋る生者の姿に、その人の人生を感じる。
生者が死者に会えるのは特別だから、偶然なめぐり逢いであるから、ある程度の不確実性に身をまかせながらもツナグに依頼する生者は、本気で夢中で、そして想いは熱くて切実だからである。
恥ずかしさも、カッコ悪さも、そこにはない。
あるのは、その人に対する並々ならぬ想い、だけだ。
不甲斐ない自分も、正直になれない自分も、何かを信じられない自分も、だけどきっと大丈夫なのだと、優しく包み込んでくれる物語のように思う。
僕ら生者は、これからも生きていかねばならない。
そのための一押しを、きっかけを、くれるかのようである。
もっといえば、あなたは生きていても良いと、いや、生きていなさいとまで言ってくれているかのような物語だ。
そんな強いメッセージが、僕のもとには届いた。
エピソード3
『ツナグ 想い人の心得』は、『ツナグ』から7年後の世界を描いている。使者としての務めを長年果たしてきた最愛の祖母から、その役目を引き継いだ歩美が、ツナグとして生者と死者を繋いでいく。
『ツナグ 想い人の心得』という、『ツナグ』の続編を読んではじめて『ツナグ』という物語が完結したように思う。
数年の時を経て、繋がっていく人や物事の数々に、思わず落涙してしまう。
『ツナグ 想い人の心得』の方が、僕は大好きである。
読み終えた後、同じ時間の中に存在できることを、僕は何よりも誇りに感じた。
何年、何十年と時が違えば出会えなかった人がたくさんいる。
だからこそ、今という同じ時間の中で生きれていることに、深く感動したのである。
生きることに素直に愚直に向き合う、素敵な物語の数々に出会え、僕はとっても満足だ。
この物語がどうか、心に響きますように。
そして何よりも、この物語と出会えますように。
(完)
第2話、辻村深月さんの『ツナグ』でした。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
『ツナグ』そして『ツナグ 想い人の心得』もぜひ小説で読んでみてください。